蜻蛉と蟷螂

トンボを中心に、季節の昆虫を撮ります。

ベッコウトンボ(2021年4月)

4月下旬、ベッコウトンボを撮りに行ってきました。

子どもの頃から存在は知っていましたが、まさか実物を目にする日が来るとは!

トンボ記事一発目に持ってくる種じゃありませんね笑

 

ベッコウトンボとは?

ベッコウトンボ Libellula angelina は、環境省レッドリスト絶滅危惧種ⅠA類、国内希少野生動植物種に指定されているトンボです。

簡単に言えば、日本に生息しているトンボの中でも特に絶滅が心配されている貴重なトンボということになります。

かつては東北地方南部から九州まで各地の湿地で見ることができたトンボでしたが、1970年代頃から急激に数を減らして行き、現在では山口県静岡県、九州各地にわずかに残された生息地でしかその姿を見ることはできません。

ベッコウトンボは植生豊かな湿地帯に生息するトンボで、同じような湿地環境を好む絶滅危惧種昆虫(タガメゲンゴロウなど)の例に漏れず、農薬などの科学的汚染に非常に弱いといわれています。

加えて、湿地の周辺には成虫が生活するための樹林や草原がなければなりません。

また、幼虫は浅い水域で生活するため、植生の遷移で浅瀬が干上がってしまったり、外来種アメリカザリガニの侵入なども大きな脅威となります。

つまり、農薬・開発・耕作放棄外来種の侵入など、現在の日本の田園地帯が抱えるあらゆる問題がベッコウトンボを絶滅に追いやる要因になります。

現在は各地で生息地保護と保全活動が行われ、なんとか絶滅を免れているようなギリギリの状態です。

 

"ベッコウ"とは?

ベッコウトンボは、まず特徴的な翅の模様が目を引きます。翅に色や模様があるトンボは他にもいますが、ベッコウトンボの翅の模様はなんともいえず独特で、非常にかっこいいです。

ベッコウトンボの名前の由来には諸説あって、翅の模様とする説と、身体の色とする説があります。

いずれも羽化直後の未熟個体の特徴を指すようですが、実物を見た私は、やはりなんといっても翅の模様こそがベッコウトンボたる所以だと確信しました。

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OM-D EM-1 MarkⅡ+M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mmF5.0-6.3 IS

見てください、この模様!

やや赤みがかった褐色の濃い部分と薄い部分があって、その濃淡がまさに鼈甲のそれです!

こんなにかっこいいトンボを絶滅させてはなりません…

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OM-D EM-1 MarkⅡ+M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mmF5.0-6.3 IS

こちらは前から近づくことができた一枚。がっしりとした体型がいいですね。

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OM-D EM-1 MarkⅡ+M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mmF5.0-6.3 IS

そしてこちらが成熟したオスの姿です。

完全な黒ではなく、やや赤みの残った黒褐色をしており、未熟個体とはまったく方向性の異なる渋いかっこよさを感じます。

翅の模様はやや主張が弱くなりましたが、独特のパターンがしっかりとアクセントになってて素敵。

強い光が当たると複眼や翅が白く反射してしまいシックな雰囲気が台無しになるので、自然光での撮影はなかなか難しいです。