蜻蛉と蟷螂

トンボを中心に、季節の昆虫を撮ります。

変わる(2021年6月)

昆虫という生き物は、成長によって姿を変えることが有名ですね。

幼虫から蛹を経て成虫に変化するその様子は子どもたちの好奇心を鷲掴みにし、大人もその神秘に息を呑みます。

トンボは蛹にはなりませんが、茶色くてずんぐりしたヤゴからは想像できないような大きな翅と宝石のような複眼を持つ美しい姿へと羽化します。

 

羽化してからも変わる姿

多くの昆虫は、羽化と呼ばれる最後の脱皮を終えることで、成虫になり、それ以降姿を変えることはありません。

しかしトンボは違います。

トンボには未熟期というものがあり、成虫になってからもしばらくは繁殖に参加することができません。

そして成熟することによって、身体の色が変化する種類が多いです。

わかりやすい例を挙げると、赤トンボの代表、アキアカネは、最初から赤色のトンボとして羽化するわけではありません。

羽化してからしばらくは薄いオレンジ色をしていて、成熟すると胸部や腹部が赤色に染まります。

アキアカネの色変化はそこまで劇的なものではありませんが、成熟前と成熟後で劇的に容姿が変化する種類もいます。

ハラビロトンボの三段変化

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OM-D EM-1 MarkⅡ+M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mmF5.0-6.3 IS

ハラビロトンボ Lyriothemis pachygastra は、全国の比較的水深の浅い湿地で普通に見られるトンボで、その名の通り、幅広い腹部が特徴です。

写真のように、メスは褐色の複眼に黄色い腹部という配色で、未熟期も、成熟してからもあまり見た目は変化しません。

一方で、オスのハラビロトンボは成熟段階によって大きく見た目が変化します。

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まずこちらが一段階目。

メスと同じく、黄色の腹部をしています。羽化してからしばらくはこの色で、ここからだんだんと色が濃くなり、オレンジ色っぽくなっていきます。

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そして、二段階目がこちら。

メスとはまったく異なる異質な見た目になりました。身体は炎を思わせるオレンジ〜黒褐色のグラデーションとなり、かなり派手です。

しかしこれもまだ成熟の途中段階。ここからさらに褐色が濃くなっていき、そして、

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このように腹部がシオカラトンボのように青白く粉を吹くようになると成熟完了です。

この3枚、別の種類のトンボだと言われても納得できるくらい別物ですよね。

成熟による色変化を知ると、トンボ観察がさらに楽しくなります。