OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
黄昏時の薄暗い川面を飛ぶコシボソヤンマ。
トンボの仲間には、朝夕の薄暗い時間に活動する、"黄昏飛翔性"と呼ばれる習性をもつ種類がいます。
夏に向けて羽化するヤンマ科の多くがこの習性を持ち、朝方や夕方の薄暗い時間帯に開けた草原の上空などを活発に飛び回ります。
多くの黄昏飛翔性のヤンマが上空の高い場所を飛ぶのに対して、地表付近や水面近くを低く飛ぶ種類もいます。
コシボソヤンマもそのタイプです。
河川の中流域に生息しているコシボソヤンマは、流れが緩やかで、日陰の多い、昼間でも薄暗い場所に生息していて、薄暗い時間帯になると川の流れの上に狭い縄張りを張り、素早く飛び回ります。
ヤンマ科のトンボは、大型で色彩が美しい種類が多く、トンボ界の花形というイメージがありますが、私はコシボソヤンマに対しては全く異なる印象を抱きました。
初めてこのトンボを見た時、幽霊みたいだ、というのが率直な感想でした。
蒸し暑い夏の夕方、川に降りると、一気に体感温度が下がります。
川に覆い被さるように伸びた木々の陰に入ると、藪蚊が一斉に集ってきます。
纏わりつく藪蚊を手で払いながら川の中を進んでいると、足元の水面をなにかが通り抜けていきました。
薄暗い川面に目を凝らすと、その正体が分かりました。大型のトンボです。
それは川の上の大体同じ場所を行ったり来たりしているのですが、なかなか目で追うことが出来ません。
近くを通る時ははっきりとトンボのシルエットが見えるのですが、波立つ水面の反射に目が眩んですぐに見失ってしまいます。
それがコシボソヤンマとの初遭遇でした。
薄暗い川面を音もなく飛び回り、同じルートを行ったり来たりする様子は、まるで幽霊。
夏の夕暮れに、薄暗い川に現れるという生態も実に幽霊チックです。
体斑は他のヤンマのように鮮やかではありませんが、緑色の大きな複眼は時に青みを帯びて非常に美しいです。
OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO