蜻蛉と蟷螂

トンボを中心に、季節の昆虫を撮ります。

ヒオドシチョウ(2021年3月)

ギフチョウを撮りに行くと、陽だまりで縄張りを張っているヒオドシチョウによく出会います。鮮やかなオレンジが目を引くかっこいいチョウですね。

 

ヒオドシチョウとは?

ヒオドシチョウ Nymphalis xanthomelas は、成虫で越冬するタテハチョウの仲間です。

早春の雑木林でギフチョウよりもひと足早く姿を現し、日当たりのいい場所で翅を拡げている姿をよく見かけます。

成虫は前年の初夏に羽化し、夏の暑い時期は休眠して秋頃から活動し始め、寒くなると再び休眠に入り冬を越します。成虫の期間が非常に長い昆虫です。

初夏に見る新鮮な個体は雑木林の樹液に飛来していることが多く、花に吸蜜に来ることは少ないようです。私は見たことがありません。

翅は表が鮮やかなオレンジなのに対し、裏側は地味で、翅を閉じていると景色に溶け込んで全然目立ちません。同じようなカラーリングのタテハチョウは他にもいますが、他種よりやや大型で、後翅に青い縁取りがあるのが特徴です。

 

武将のような存在感

ヒオドシチョウの和名の由来は、翅の鮮やかなオレンジ色が、戦国時代の武将が身につけていた緋縅(ひおどし)の鎧を連想させることから名付けられたといわれています。

そんなヒオドシチョウ、個人的には色だけではなく行動も武将に通じるものがあると思います。

春に見るヒオドシチョウは、山頂や尾根などの陽だまりで翅を拡げていることがほとんどですが、のんびり日光浴しているわけではありません。

近くを他のチョウが通りかかると、ものすごい勢いで飛び立って、しつこく追い立てて縄張りから追い出します。

飛行機のスクランブル発進を思わせるその勢いは凄まじく、近くにいるとバタバタという力強い羽音が聞こえるほど。

緋縅の翅を拡げて縄張りを主張し、侵入者には獅子奮迅の猛攻を繰り出す様子は武将さながらだと思います。

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OM-D EM-1 MarkⅡ+M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mmF5.0-6.3 IS

ヒオドシチョウの後翅には本来青い縁取りがあり、それが非常に美しいのですが、この個体の後翅はボロボロに擦り切れてしまってそれが確認できませんでした。

越冬明けの個体はこういう個体が多いのですが、厳しい冬を乗り越えたからというよりは、縄張りを守るために戦い続けた歴戦の証みたいなものでしょう。かっこいいですね。

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OM-D EM-1 MarkⅡ+M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mmF5.0-6.3 IS

こちらの写真は、逆光を利用して、翅のオレンジを透かしてみました。翅はボロボロですが、弱々しさは感じません。

珍しい種類のチョウではありませんが、出会うとついついカメラを向けたくなる魅力的な被写体です。